[中国マーケティング見聞]体験行脚する若者たち。

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筆者は上海市で週に一度プール通いしているのですが、費用が中々ばかになりません。

回数券を利用しているのですが、一度につき日本円にして800円ほど掛かります。

もっと安く利用できないかと思いつつも、回数券を使い切ってからまた別の所を探すなりすればいいか、と考えています。

ところで、プールやスポーツジムの利用、そしてエステサロンや歯のクリーニングなどについて、中国では「体験行脚」する若者たちが増えている、というコラムを最近読みました。

「若者たちの“一度きり”生活〜無料体験行脚、絶対会員カードは作らない。」(年轻人的“次抛”生活:免费体验,绝不办卡)」(原文はこちらの記事を参照)というタイトルのコラムです。

要約としましては、ジムやエステなどで、入会をせずに体験価格で一度きりの利用をする。また時間を置き、ジムやエステなどを利用したくなったときに、別の体験できる施設を探す。

ーーこのようにして体験でサービスの享受を繰り返す若者たちが増えている、というものです。

ケーススタディがいくつか紹介されており、例えば、23歳の女性はプールを利用するのに、自宅周辺や勤務先の周辺で初回体験を、無料、あるいは割引価格で提供している所を探すそうです。

見つかるのは20元(約400円)程度の初回限定体験利用が多く、それよりさらに安く見つかることもある、とのこと。

当然、体験は一度きりしかできないので、まもなく自宅周辺、勤務先周辺のプールは行き尽くしてしまいますが、この女性は、最寄駅から隣駅、さらに隣の駅・・というように徐々に範囲を広げて探していくことで、体験価格を享受し続けているそう。

体験利用のためであれば、5駅ぐらいの範囲なら受け入れているそうです。

他にもいくつかケーススタディが紹介されている中で、この「無料(あるいは大幅な割安)価格行脚」は、なんと言っても安く利用したい、という目論見がもっとも大きい一方で、他の要因もあるようです。

例えば、会員カードを作ったのに施設が閉店となってしまい、最初にまとめて支払った会員費の分利用できず、大損となってしまうことを避けられる、という利点があります。

また、会員になって通ううちに、コーチやトレーナーと親密になったがために、オプションサービスなどの売り込みを断りにくくなるのを回避することができる、といった利点も、この「一度きり」利用にはあるようです。

また、会員カードを作ってしまったことで「行かなくちゃ」と心理的な負担になるので、それであれば行きたいときに都度体験コースを探す方が気が楽、という面もあるようです。

たしかに、期間限定の回数券などを持っていると、「行かなくちゃ」とストレスが掛かることは、容易に想像ができます。

コラムでは主に利用者側の思惑を紹介していましたが、施設側としてはこのような「一度きり」利用客ばかりとなってしまうと、運営に大きな影響があるでしょう。そして、運営に負担が掛かり、閉店に追い込まれる施設が増えるとまさに、「一度きり」利用客が恐れる、「閉店してしまい、最初の支払い分も利用できない大損」という被害を受けてしまいます。

施設側にとっても利用者にとっても、不幸な悪循環と言えます。

そういえば、筆者が一時期都度利用していたスポーツジムに久々に行ったところ、トレーニングマシンが以前に比べだいぶ減っていました。運営が苦しいのかもしれません。

以前、会員になろうか考えたこともあったのですが、都度利用にしておいて良かったかもしれません。次回、足を運んでみたらもう閉店していた、という事態は十分に考えられます。

スポーツジムに限った話ではないですが、サービスの提供者は、顧客のニーズやそれに基づく行動パターンを把握した上でサービスの内容や料金体系を臨機応変に変えていかなければならない、ということが言えると思います。

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