「貴州茅台」社をもう少し掘り下げてみます
先日、気になる中国企業として「貴州茅台(マオタイ)」社を取り上げたのですが、きっかけは、5月の同社株価下落以後、それまで臨機応変に行っていた出荷価格の引き上げの実施が難しくなり、成長にブレーキがかかる可能性がある、という指摘を含む日経の記事を読んだことでした。(先日の記事はこちらをご覧ください→[気になる中国企業]酒造メーカー『貴州茅台(マオタイ)』。)
その後、貴州茅台社の近年の業績や、同社のマーケティング戦略を気にかけ、ネット上で関連資料を調べたり、また、上海で偶然見かけた「茅台体験館」なる場所にも足を運んでみました。
同社が手掛ける様々なユニークな戦略や、戦略の背景についてもう少し参考情報を整理して記事にしたいと考え、本記事ではまず基本を押さえる意味で、同社のプロフィール、及び近年の業績について、公開されている情報から幾つかの数字を紹介していきたいと思います。
貴州茅台・プロフィール
■企業名:貴州茅台酒股份有限公司
■概要:1999年設立、2001年上海証券取引所上場。本社は貴州省遵義市仁懐市茅台鎮。
■業績について:2013年に売上300億元を突破し、業界トップ企業へと飛躍。その後も順調に売上を増やし、2017年に500億元、2021年には1000億元を突破。昨年度(2023年)の売上は1506億元に達した。
■茅台酒製造の歴史自体は長く、400年前から現在の生産地である茅台鎮で作られ、世界三大蒸留酒として、スコッチウイスキー、コニャックと並び称される。また、1915年のサンフランシスコ万国博覧会での金賞受賞、1972年の日中国交正常化式典の宴席で、田中角栄首相と周恩来総理が茅台酒で乾杯したことで日本でその名が知れ渡ったなどの逸話もある。
■近年、度々中国国内および海外にまで、そのユニークなマーケティング戦略が話題となっている。まず、2022年5月に発売された、中国乳製品大手・蒙牛社とのコラボ商品「茅台アイスクリーム」は、アルコール度数53度の茅台酒が含まれており、高価格(66元・約1300円)にも関わらず、発売開始後まもなく売切れとなるほど話題となった。(なお、現在はスーパーで普通に購入できる。)
続いて、2023年9月には、中国大手コーヒーチェーン・luckin coffee(ラッキン/瑞幸咖啡)とのコラボ商品「酱香拿铁」(白酒入りラテ)が、初日だけで542万杯、1億元(約20億円)を売り上げた。
一方で、商品販売の新チャネルとして2022年末にアプリ「i茅台」をリリースし、ユーザーは3000万人以上に達している。ユーザーは、同アプリを通じ茅台酒の購入や、各種プロモーションに参加することができる。
十年余りで、売上規模は7倍以上に成長。
以下は、貴州茅台社の売上・純利益の推移グラフです。
2011年の売上200億元から、十年余りで1500億元を突破する急成長を遂げています。
また、その間高利益を維持し続け、純利益率はほぼ45%以上をキープしています。
この急成長、高利益体質について、筆者は特に同社に対して老舗の印象が強く、長らく高水準の業績を上げてはいるのだろうと漠然と考えていて、近年ここまで急成長していることに驚きを感じました。
また、直近の乳製品メーカーやコーヒーチェーンとのコラボ商品の発売や、アプリや直売店でのユーザー囲い込みなど、話題となる仕掛けが多いことから、業績に翳りがあるのかと思ったら、全くそんなことはなく、むしろ、業績が好調なうちに新たな仕掛けによる新規・若年層ユーザー獲得を狙っているのだろうと考えるようになりました。
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今回は概要紹介のここまでにとどめ、また改めて同社のマーケティング戦略や、近年注力している海外展開についても参考情報をまとめたいと思います。
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