安踏(ANTA)プロフィール
先日のブログにて、パリオリンピック協賛・協力中国企業のリストを紹介しました。
本日は、その中で、メダル授与式で中国代表選手が着用するユニフォームを供給したスポーツアパレル大手の「安踏(ANTA)」のプロフィール、及び、直近の動向として中国でも注目度の高い、環境保護重視の潮流において、中国では「グリーン製造」とも呼ばれる、脱炭素に向けた取り組みについて紹介したいと思います。
まず、「安踏(ANTA)」のプロフィールです。
■企業名:安踏体育用品有限公司
■概要:1991年設立、2007年香港証券取引所上場。本社は福建省晋江市。
■年商623.56億元、純利益102.36億元。時価総額1985.67億香港ドル。
■斐楽(FILA)、迪桑特(Descente)、可隆(Kolon)、斯潘迪(Sprandi)、亚玛芬などのブランドを多数展開。イタリアの老舗ブランド「FILA」は2009年に約6億香港ドル(約99億6000万円)を投資し中国での商標使用権など全ての権利を取得したもので、また、2019年にはフィンランドの「Amer Sports(アメアスポーツ)」を46億ユーロ(約6490億円)で買収している。中国で人気の高い、カナダのアウトドアブランド「ARC’TERYX(アークテリクス)」の主要株主でもある。
近年の成長に伴い、環境保護責任も高まる。
報道では、安踏の時価総額はスポーツアパレルの二大巨頭の一角であるアディダスを超えたというものも見られます。
やはり、14億人の人口を抱える中国を自国市場とするのは中国スポーツアパレル企業の大きな利点であり、中国市場で大きなシェアを握れば、そのまま世界シェアの獲得に繋がる面は大きいでしょう。
一方で、ポテンシャルを秘めるアフリカ市場に対しても、安踏はトップマラソン選手とスポンサー契約を結ぶなど、着実に認知度の向上のための施策を進めているように見えます。
巨大な中国市場に加え、ポテンシャルのあるアフリカ市場でもシェア向上が見込めるとなると、安踏のスポーツアパレル分野での影響力は大きく、ということはつまり、企業としての脱炭素・環境保護への責任も大きくなります。
安踏(ANTA)の環境保護公益活動。《山河計画》など。
安踏は、パリオリンピック開幕の一年前となる2023年7月に環境保護公益活動《山河計画》を発表しました。
これは、環境保護ウォーキングイベントなどで参加者からプラスチックボトルを集め、リサイクル技術を用いて、パリオリンピック中国代表団のユニフォームを製造する、というものでした。
“龍の鱗”をあしらったデザインが特徴的で、CO2排出50%以上の削減を実現した、という触れ込みです。
安踏は、パリオリンピック以外にも、杭州アジア大会の授賞式典用シューズで同じくプラスチックボトルを再利用したシューズを製造。これは、ペットボトル5.4本分で一足を製造したとのこと。
また、2012年のロンドンオリンピックでも、環境配慮型の糸を使用した授賞式典衣裳を製造。これは、糸1トン毎に、6トン分の石油消費削減、省エネ80%減を実現したものだったそうです。
このように安踏は近年一貫して持続可能開発に力を入れており、本社のある晋江市の報道番組では、グリーン製造をリードする地元のトップ企業として紹介され、李玲副総裁が以下のように話しています。
- 安踏にとって、持続可能開発は非常に重要な発展戦略である。
- 各ブランドで積極的にサステナブル製品の開発を進めている。
- 我が社の商品は、再生可能原材料、クリーンなエネルギーの利用を通じ、カーボンニュートラルを目指している。
- 自社の取り組みの他、サプライチェーンにも影響が波及するようESG標準の導入、サプライヤーに対するESG技術のトレーニングなどを提供している。
- 安踏としては、時間軸としてのターゲットを2030年及び2050年に置き、《1+3+5 持続可能戦略目標》を策定している。
- 最終目標が『1』、2050年のカーボンニュートラル達成である。
- 中期目標として、2030年までに『3つ』のゼロを目指す。3つはそれぞれ、自社生産廃棄物の埋め立て処分ゼロ・自社設備による天然プラスチック(再利用不可)のゼロ利用・炭素排出量ゼロ、である。
- 同じく、2030年までの『50%』目標として、サステナブル製品率50%・戦略パートナーの省エネ50%・戦略パートナーの再生可能エネルギー代替50%・再生可能材での包装割合50%・自社運搬設備の省エネ50%、を設定している。
李玲副総裁はこのように安踏の持続可能開発方針を説明した上で、今後各ブランドから、環境保護・再生可能のコンセプトを体現した製品を発表していくのでご期待下さい、とインタビューを締めています。
安踏の製品販売量は年々増加し、今やシューズが1億足、ウェアを中心とした関連商品が2億点に達するとのことですので、確かに中国、ひいては世界の環境問題への影響力も少なくないでしょう。
安踏が本社を置く福建省には、同じくパリオリンピックの協賛企業である匹克(PIKE)、特歩(Xtep)などもあり、安踏の持続可能開発、環境保護の方針が同業他社を巻き込み、大きなムーブメントを生み出していく可能性もあります。
(本記事作成にあたり、安踏HP、安踏ウィキページ、36krJapan、晋江市電視台ニュースなどを参照しました。)
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