茅台(マオタイ)酒と中国経済の景況。
先日、中国経済の回復が遅れている象徴の一つとして、茅台(マオタイ)酒の値崩れが起きている、という日経の記事を読みました。
記事では、流通価格の下落は、消費不振と接待需要を反映しているもので、特に接待需要の落ち込みは、企業業績の低迷に起因する、と分析されていました。
中国ビジネスに関わっている方の中には、そういえば茅台酒を飲む機会が以前に比べ減ったかもしれない、と思い当たる節のある方もいるかもしれません。
接待の場自体の減少と、贈答品の予算削減、という現状がうかがえます。
『貴州茅台』の業績は堅調。
日経の記事によると、茅台酒のメーカー・販売元である『貴州茅台(キシュウマオタイ)』社は、出荷価格を市場の需要に応じてコントロールしており、需要が増えると出荷価格を上げてきたそうです。
しかし、貴州茅台の株価は今年5月に下落し、今後、出荷価格の引き上げは難しく、同社の成長にブレーキがかかる可能性がある、と指摘しています。
一方で、貴州茅台が発表している年次報告書を見る限りでは、2023年度の売上は1506億元で前年比18%増、利益総額は1306億元で前年比49%増と好調がうかがえます。
また、2024年の1-3月における売上は460億元(前年同時期比18%増)、利益総額は330億元(同15%増)と、これらは過去最高の業績を記録したようです。(数字は『貴州茅台酒股份有限公司』発表。)
業績を支えるのは商品ラインナップやブランド力か。
「茅台酒」と一口に言っても、ピンからキリまである、というのはよく聞くところです。
「貴州茅台酒」の五文字がラベルされる、『飛天』、『五星』、『生肖』、『年份酒』などのラインナップが高級品に属するのに対し、『茅台1935』、『王子酒』、『迎賓酒』、『赖茅』、『汉酱』、『貴州大曲』などは高級品に次ぐ比較的リーズナブルな「茅台シリーズ」と位置付けられているそうです。
高価格帯のものからリーズナブルな価格帯のものまで揃えることで、多様なニーズに応えているものと考えられます。
また、以前別の記事でも触れましたが、「茅台酒」の認知度・人気を活用した大手コーヒーチェーン・luckin coffee(ラッキン/瑞幸咖啡)とのコラボレーションも中国国内では大きな話題となりました。
このようなコラボが話題になるのも「茅台酒」のブランド力が確固たるものだからこそで、堅調な業績を支える一要因と言えるでしょう。
茅台酒の値崩れ現象は、確かに中国の経済不況、また消費の変化を反映している一方で、『貴州茅台』社発表の数字を見る限りでは、更なる成長の余地もありそうです。
コーヒーチェーンとのコラボ以外にも、乳製品大手『蒙牛』との共同開発による「茅台アイスクリーム」も話題となるなどユニークな動きが見られる貴州茅台については、今後も注目したいところです。
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