「中国離れ」という現象。
先日、『NIKKEIで深読み 中国経済の真相』というポッドキャストのコンテンツを聴いていたところ、冒頭で司会の方が「中国ウォッチャーとして中国を見てきたが、今ほど中国で何が起きているか分かりづらくなった時はない」という旨のことを仰っていました。
確かに共感するところはあります。
また、どちらが先かはわからないのですが、「お互い、関心が薄くなりつつある」、「遠い存在になりつつある」ということも感じます。
「関心が薄くなったから遠い存在になってしまった」のか、はたまた、「遠い存在になってしまったから関心が薄くなってしまったのか」、卵が先か鶏が先かはわからないですが、いずれにせよ、「中国離れ」、及び「(中国から見ての)日本離れ」という現象は進んでいるように感じます。
中国市場の肌触りを、中国企業を通じて感じてみる。
中国ビジネスに20年関わる中での肌感覚でしかないのですが、上述の通り「中国離れ・日本離れ」を感じる中で、不定期となりますが、弊社の視点で「気になる中国企業」を取り上げ、その企業の成長の経緯や、変化の様子を整理してみることで、中国市場の肌触りを少しでもお伝えできればと考えました。
一般の日本人には馴染みが薄く、しかしながら中国市場(あるいは世界市場)においては一定の知名度・影響力を有している企業を取り上げていきたいと考えています。
前置きが長くなりましたが、今回はアパレルメーカーの『波司登(ボストン)』社を取り上げたいと思います。
※同社の日本語読みは、Forbes Japanなどのメディアではピンインの「bo si deng」をカタカナ読みした「ボシデン」としているようなのですが、弊ブログでは中国語発音(bosideng)に近く、同ブランドが意識していると思われる米国都市Bostonの発音に合わせ、「ボストン」で表記させて頂きます。
老舗アパレルメーカーの変化。
ボストン社は、1975年創立の老舗アパレルメーカーで、ダウンジャケットを主力商品としています。
売上データを見ると、2023年の総売上「167.7億元」の内、ダウンジャケットの売上が「135.7億元」と約81%を占めています。(データ参照元「百度股市通」)
近年、同社の広告や店頭での商品構成を見ていると、薄手の商品を多く見かける印象が強いのですが、売上構成から見るとまだまだダウンジャケットが強いようです。
上記画像は同社のミニプログラムのスクリーンショットですが、ボストンは近年、ブランドイメージの刷新に注力しているように感じます。
以前、2000年代は幅広い年代層にダウンジャケットを販売しており、筆者も足を運んだことのある路面店はやや男性向けの地味な印象を受けました。
また、今もその傾向は残っているようですが、上海などの大都市よりは地方都市での人気が高く、購買力のある大都市では欧米・日系ブランドの人気が相対的に高く、中国の老舗ブランドであるボストンは苦戦していた印象も強いです。
しかし最近上海で見る店舗は、店内がとても明るく、以前に比べ随分垢抜けたイメージに様変わりしています。
ディスプレイされている商品は、季節要因はあると思いますが、薄手のウインドブレーカーや、アウトドア向けの商品、若年層を狙ったイメージを押し出している印象です。
上記画像はミニプログラムの商品トップページで、商品種類は大きく3種類、「女性」「男性」「子供」と分かれていますが、いずれも郊外、アウトドアでの着用イメージとなっています。
このような多角化の陰には、実は日本の伊藤忠のバックアップもあるようですが、もちろん本質的には創業社長の高徳康氏を中心とした経営陣の戦略によるものと考えられます。
高氏が業績好調の理由について回答したインタビューによると、最も大事なのは中国の消費者のニーズに応えること。また、ニーズに対応するために製造工程の自動化を進め、製造効率の向上により生産能力を引き上げることに成功したそうです。
ヒット商品の『3wayダウンジャケット』は23万着の販売を記録したそうです。
高氏は中国市場に留まらず、世界市場も目標に据えているということで、いつの日か日本の消費者の中でも認知が高まるかもしれません。
日本のユニクロ(ファーストリテイリング)などと比較するのは尚早でしょうが、今後の同社がどのようなブレークスルーを重ねて成長していくのかは興味を持って見届けたいと考えています。
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